対談⑧ 中尾 友昭 氏

日本青年会議所 JC jc jc ライトダウン わっしょい

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中尾市長×松尾理事長対談

松尾
 まずは下関市から見た北九州市、また関門地区のこれからの役割や展望をお聞かせください。

中尾
 ポイントはいくつかありますけれども、まず一つ目に、政治が中央集権から地方分権へとなると、道州制というものが進むと思います。九州(州)や中国州などになる。連携で関門市という構想があって、それは素晴らしい考え方ですが、行政区域を越えて決行することは難しいと思います。ただし九州(州)ができても北九州市は九州の北端ですし、中国州ができても下関市は中国の西端です。端というのは総合支所すなわち拠点ができます。位置的に途中にあって何もできないよりは、端というのは地域の拠点を掴むことができます。あとは連携だけです。道州制になっても、地域が埋没してしまわないように頑張らなければなりません。二つ目に関門の観光ブランドがあります。北九州市ですと門司港のレトロ電車や和布刈公園、下関市でしたらロンドンバスや火の山公園。要するに観光ルートとして門司から下関にかけての連携が素晴らしいと思います。「海峡のまち下関」。下関側から見ると「海峡のまち北九州」。「海峡のまち」はお互いが共有しており、観光・文化・歴史・産業の全てが集約されています。また源平船合戦、巌流島の決闘、明治維新、第二次世界大戦と、この関門地区で動きがあったわけですが、それは両市民が頑張ったからというわけでもなく、地理的なものです。坂本龍馬がここに来たのもそういう商業なり政治の集積があったからです。さらに三つ目は、東アジアに向けたゲートウェイです。これに関しては門司港それから北九州空港もありますし、そういった面で北九州市は、国際的な物流の拠点ですよね。そこに下関市も間違いなく北九州経済圏に入っております。それはもう行政区域は二の次です。行政区域で一つにしなくても経済圏は勝手に動きますからね。そして最後に、九州と中国の結線点が重要です。現在関門トンネルのリフレッシュ工事を行なっておりますが、トンネルが全面通行止めですので、皆大渋滞して関門橋へ迂回しています。この大動脈となる線が、将来的にもしものことがあった時に切れてしまったら、たちまち動脈は機能不全となってしまいます。ですから第二関門橋道路が必要となってくるのです。下関市の彦島から北九州市小倉北区の日明を結ぶわけですから、現在の関門トンネルとは線が異なります。これはやはり国家プロジェクトとして求めていかなくてはなりません。採算の問題ですが、公共事業を行なうのは採算だけではありません。採算だけでしたら民間ができる仕事です。そうではなくて、公共投資をして橋梁工事の技術の伝承を行なうことに意味があるのです。

松尾
 今後についてはやはり、北九州経済圏全体で見ていくことが両市の発展に不可欠だと思います。例えば観光という視点で見ても、北は俵山温泉のあたりから南は苅田町・行橋市あたりまで含めてもっと広い範囲で一つのエリアとして考えていかなければ、お互いの地域が生き残っていけないではないのでしょうか。そういえば以前、JR小倉駅前で、JCに関連した街頭アンケートを行ったことがあるのですが、下関市から来られている方が結構多くて驚いたことがあります。それは下関側からすると好ましい事ではないかもしれませんが、下関市民のこちらに向けての心の距離感は、我々が思った以上に近いのだなと感じました。「関門」という言葉だけでは、どうしても関門海峡の対岸だけの話になってしまいますのでこれから両市の発展を願うと「関北(かんほく)」という言葉のほうが適切だなと思います。

中尾
 それはありますね。下関市も一市四町の合併で広くなり、すぐ隣が長門市、そして美祢市。やはり下関市は長門市と美祢市とは連携していかなければなりません。それは経済や観光もそうですが、猪や鹿などの鳥獣被害の対策、消防・防災などといった連携も必要です。山口県の4分の1は北九州の方に向いていると思うのですが、北九州市と仲良くしましょうというのは、下関市から見ればまず門司なのですよ。下関市から小倉にはたくさん人が行っているでしょうから、それはいいのでしょうが、若松や戸畑や八幡となると遠くて自分の行く範囲ではないといった感じになりますよね。先程も申し上げましたが、まずは門司との連携を強化していかなければならないと感じております。

松尾
 地域の将来ビジョンをミクロとマクロの両方の目線を持って持ち、それを周辺地域と共に共有すること、現実的に動かしていくことが以前より強く求められているような気がします。私的には、先ほどから申し上げていますが北九州市として生き残っていく為にどうするべきか。そう考えた時に「関門海峡」という財産がある。しかしそれだけでは対岸のみの発展である、なのでもっと大きなエリアの発展を目指すと「関北」といったエリアでどう考えていくかという発想になるのかなと思って意見を述べさせて頂きました。

中尾
 しかし、北九州市は工業のレベルが高いですから、航空産業(宇宙)なども良いですよね。『下関市も将来的な工業の道は?』と聞かれると「航空産業(宇宙)」それから「環境」です。特に「環境」は北九州市のほうが先輩であり、かなり先に進んでおりますよね。環境都市として見習わなければなりません。

松尾
 北九州市は「世界の環境首都」を目指していますし、昨年「環境モデル都市」に認定頂きましたので、ようやく北九州市としての明確な地域アイデンティティができたなと思っております。環境をテーマにしてJCも長年取組んでいますし、是非これからも期待してもらいたいですね。

中尾
 こちらも少々自慢させて頂くと、下関市の自慢は「食」です。「食のブランド」フグにクジラ、アンコウ、イカ。関門海峡もイカが獲れるのですが、それは甲イカで、下関市の豊北町でとれる剣先イカが一番美味しいイカです。ただ関門のタコはおいしいですけどね。それから、下関市は自然が多いですよ。休日の山陰線国道191号線は北九州ナンバーの車が非常に多いのですが、あれを見ると北九州市よりは自然が多いのかなと思います。

松尾
 まだまだ認知度が低かったりするので、もっと良いポイントを知れば下関市にも更に流れができると思いますし、先程から申し上げておりますが、北九州市として生き残っていく為にどうするべきか。そう考えた時に「関門海峡」という財産がある。そしてもっと大きな範囲ですと「関北」といったエリアでどう考えていくかという発想になるのかなと思います。さて、次に下関市長として北九州市に望むことは何かございますか。

中尾
 これはお互いの話になるのですが、夜の「あかり」です。この関門海峡の「あかり」は今すごいですよね。これをもっと増やしたほうが良いと思います。そうすれば北海道の函館や小樽より有名になります。これはお互いにメリットがあることですので、いずれ提案しようと思っております。例えば、門司側の新たな海峡沿いの「あかり」は下関市が負担する。下関側の新たな海峡沿いの「あかり」は門司区が負担する。お互いに「あかり」を見せ合いましょうという考え方です。きっとすごい帯になることでしょう。函館では、各家庭や施設が協力して、夜間のある一定の時間まではカーテンを閉めないという話を聞いたことがあります。関門地区も行政だけではなく、そういった市民や企業を巻き込んで、この「あかり」に取り組めば、素晴らしい名所になります。そうすれば、夜景を見に来る観光客や宿泊客も増えますからね。

松尾
 なるほど。それは面白いですね。ここの地域でしか出来ない取り組みですよね。ところで、話は変わりますが、社団法人日本青年会議所の全国会員大会が毎年10月に全国各地で行なわれておりまして、今年は10月に沖縄県那覇市で開催され、来年は神奈川県小田原市で、2011年は愛知県名古屋市で行なわれることが既に決まっております。そして去る10月15日に、2012年は北九州市で開催されることが正式に決定いたしました。そうなると、ますます、運輸・宿泊・観光といったさまざまな分野で下関市との連携が必要になって参りますので、先ほどの市長のアイデアも含めて、共に考え実際に実行していかなければならないなと思っております。

中尾
 それは是非とも期待したいですね。互いに宜しくお願い致します。まちづくりというのはそう簡単にはいかないものです。行政に任せても、市長が何でもかんでも出来るわけではありません。むしろ市長は行政の枠というものがあって、なかなかできない事が多いものです。だからこそ若い人の知恵、アイデアというものが重要でしょうね。

松尾
 そうなるとまさしくJCの役割ということになるのでしょうが、ここでJCの先輩でもある市長から、JCに対する期待感や、今後我々がどのようなことを目指すべきかというご意見を伺いたいのですが。

中尾
 最も印象深いのは、JCは世界に繋がっているということです。それから私がいつも感じていたのが会社経営の二代目が多いですよね。二代目がいて会社は大体三代目が潰すと言われておりますが。

松尾
 ちなみに私は三代目です(笑)。

中尾
 気を付けないと危ないですよ(笑)。というのは、三代目というのは良い所しか見ていないのです。おじいさんはもの凄く苦労して会社を創り、お父さんはそれを見て会社を手伝い、そこそこ頑張る。孫は良い生活をし、お金もあるのでどんどんやろう。ですから三代目で潰すとよく言われます。先程の話に戻りますとJCは二代目が多いのですが、二代目に甘んじては駄目です。二代目が良い方向に向かうというのは割と少ないと思います。創業者のスピリットを忘れてはいけないのです。それを研修としてもう一度できることを考えると、JCは最高の場だと思います。JCは会社経営より更に難しいですよね。会社でしたら、職員を雇っておりますので、給料を渡して「俺の言うとおりについてこい」などと命令ができますが、JCで命令などしていたら、お互いが経営者ということが多いので、「何故お前の言うことを聞かなければならないのか」となりますよね。ですから会社と違い、お互いしっかりやろうと頑張っていかなくてはなりません。まさしくこれがスキルアップに繋がります。これは非常に良いことだと思います。JCとはそういう訓練の場ですよ。今後の高齢化社会や北九州市から福岡市への人の流出等を考えますと、地場で頑張り、雇用も確保して、自分の商売もうまくやっていかなくてはなりません。経営者とはいうのは、経営と財務との両方のバランスがとれていないと難しいのです。営業ばかりできて、税務に関しては、税理士まかせ。これでは駄目ですね。税務の詳細は分からなくてもよいですが、経営のプロは何と言っても経営者の方ですから。そういう意味では、税理士と対等に話をしなければなりません。それを税理士に頼って、『うちの会社はどうですか?分析してください。』こんなことで経営ができるわけがありません。それでできるのでしたら、その税理士の事務所自体が、職員100人を抱えて凄く大きな事務所になっていなければならないのですが、大体なっていないですね。だからそこを勘違いしてはいけないのです。税理士は確かに良いことを言いますが、経営者はやはりそういった良い部分を使わなければなりません。営業も財務も両方必要。バランスです。資格があれば良いようでそうでないようで。通常、経営者は資格必要ないですよね。雇えばいいのですから。それを自分がなまじっか勉強して、資格もあったらいいなという考え方では駄目です。自分で営業なら営業をかけて人を雇わなければなりません。話は変わりますが、仕事とJCの両立において、時間の使い方が変わりますよね。人間というのは不思議なもので、例会がある日、あと2時間しかない。その時の勉強や仕事はすごく能率がいいものです。逆に、今日は日曜日であと10時間もある。ぼちぼちとやろうかな。これはまったく駄目ですね。

松尾
 市長がおっしゃっていることがよく分かります。追い詰められたら皆頑張りますからね。何時までにしなければならないと区切られると、そこからの伸びしろというのが一番大きいのでしょうね。

中尾
 そうですね。それからJCは、スピーチの機会等も多いでしょ?あれは絶好のチャンスですよ。『私の話を聞いて下さい』と皆にお金を払ってもよいくらいですよ(笑)。特に理事長は最高ですよね。今、北九州JCはメンバー何人位いるのですか?

松尾
 300人位ですね。

中尾
 それは凄いですね。まるで大企業の社長ですよね。松尾理事長の会社は何人位いるのですか?

松尾
 8人です。

中尾
 それは大変良いチャンスではないですか。

松尾
 これは本当に良い機会を頂いております。

中尾
 それだけ多くのメンバーをどのように引っ張っていくか。男の世界ですね。それからJCへの希望がもうひとつございます。今盛んにマニフェスト等の公開討論会を行なっておりますよね。まるでJCの専売特許のように、JCが先取りして行なっておりますけれども、今度はこれを検証して欲しいと思います。4年に1回の選挙でしたら、途中の2年後に検証をする。また4年後に行なうと、それまでマニフェストだ、討論会だ、と言っていたJCがその間何のチェックをしたかということになります。是非ともこの中間での検証を行なって欲しいですね。ただその際、企画に関しても相当な打合せをしたり、しっかり勉強しておかないと、普通のイベントのような調子で行なったら、反対にJCがやられますよ。そのあたりも十分考慮して検討して頂きたいと思います。いずれにしても、「馬関まつり」をはじめ、この下関市も若い力に支えて頂いております。下関市でしたら、JC、21世紀協会、商工会議所青年部。やはりこの3つがそれぞれ受け持って頑張っております。特にJCには今後もその若さとパワーに期待しておりますよ。しかし北九州JCは280人もいたら立派な団体ですよね。

松尾
 北九州市には五市合併した弊害もあって、全市的エリアで活動する団体が少ないのですよ。そして下関市と違って商工会議所青年部などの青年団体が他に無いだけに、我々北九州JCが動かないと、何にも始まらないということも結構あったりします。そういった市民や行政からの期待をメンバーは皆ヒシヒシと感じながら活動しているということはありますね。

中尾
 そうですね。ですから松尾さん、40歳で卒業でしょうがその次ですよ。これからもまちづくりを続ける。例えば1年毎にコロコロ変わらず、1度、理事長や委員長などになったら5年やる。そういったことも大事ですよ。単年度制は、それはそれで良い部分もありますけれども、継続していくためにはJCも変わっていかなければならないと思います。期待しております。今日はありがとうございました。

松尾
 これからも市長の期待に負けぬよう両地域の発展にむけて、我々もまちづくりの運動を強く推進していきたいと思います。こちらこそ貴重なお時間を頂き、ありがとうございました。

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