対談⑦ 麻生 渡 氏

日本青年会議所 JC jc jc ライトダウン わっしょい

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麻生県知事×松尾理事長対談

松尾
ずばり、麻生知事から見て北九州市はどんなまちか、率直な意見をお聞かせ下さい。

麻生
まず一番目に、北九州市は極めて実直なまちです。官営八幡製鐵所から始まり、そして製造業を中心に発展してきました。ですから、仕事をする人は三交代が当たり前で朝でも夜中でもきちんと働く。非常に真面目に勤労するという事が、きちんと受け継がれているまちであると思います。二番目に、進取の気性があります。北九州市の課題は何と言っても産業公害問題だったわけですが、これを克服するというその課程においては若い世代の役割が非常に大きかったと思います。結局、若者が新しい事、また先見性のあるものに取り組んできたという事は、まち全体が新しい課題を見抜き、それに取り組んでいこうという進取性そして伝統があるわけです。三番目には、何と言っても北九州市は環境モデル都市です。つまり、世界中が『北九州の実践事例を学んでいこう』と、その素晴らしい成果はまさに今後、世界中の手本になる。もっと言うと、世界文明の先端を行っているという事なのです。環境問題というのは温暖化をはじめ、21世紀の最も重要な課題の一つです。その中で北九州市は、資源のリサイクルに先行的に取り組んで最も優れた実績をあげていますよね。水素タウンも良い例です。日本はCO2、25%削減という本当に大変な事を実現しようとしています。本当に、実現しようと思ったら、エネルギー体系を根本から変えるつもりでないとできないのですが、そのような非常に大きなエネルギー体系の変換を世界に先駆けて、水素社会づくりというような事もやっています。そういう意味でも、革新と先見という事を着実に実施して成果をあげている都市であると言えると思います。そして四番目に、お祭り好きですよね。「わっしょい百万夏まつり」もそうですが、各地でもお祭りがありますよね。私も小さい頃、7月と言えば必ず『祇園さん、祇園さん』と言って戸畑の提灯山笠に行っておりました。賑やかで、陽気でお祭り好きであるという事ですね。少しだけ自慢させて頂きますけれども、おそらく戸畑の提灯山笠は、日本でもっとも洗練された祇園祭りだと思いますね。

松尾
それは、どういった点でそう思われますか??

麻生
京都の祇園祭りが、祇園祭りの本山なのですが、優雅というか、ゆったりしています。優雅で絵巻物なんかも非常に美しく、まさに美と優雅の祭典なのです。一方最も極端なのが博多で、とにかく山笠を担いで、どこが一番早いのか競争するという、最も活動的で元気のある祭りなのですが、これは京都の祇園とは一番対局にあるわけですよね。そして、戸畑の祇園祭りはその両方を融合しておりまして、夜空に輝くきれいな提灯山もさることながら、その前の行われる、お神楽を奉納する儀式は非常に優雅です。さらにその祇園山笠を担いで走り回るという、両方の良さを持ち合わせたお祭りなのです。

松尾
確かに、言われてみると戸畑提灯大山笠は、両面性を持ち合わせたお祭りですよね。

麻生
ですから私は、日本一洗練されているなと思うのです。

松尾
なるほど。確かにそうですね。納得しました。

麻生
戸畑提灯山笠は優雅で、活動的、そしてエネルギーのある山笠だと思います。しかし、北九州市内には小倉祇園太鼓をはじめ、各地に長い伝統を持って残っているのですよね。例えば、若松の「おえべっさん」なんかも非常に長い伝統があり、それを守りながらやっていますよね。各地それぞれ、たいへん楽しいお祭りを持っています。そういう意味では、お祭り好きですよね。

松尾
私も、八幡東区が地元なのですけれども、「前田祇園」というものがありまして、約800年の歴史があるようですので、地元では、「戸畑提灯山笠」や「黒崎祇園」よりも古くて伝統があることを皆誇りに思っています。やはりお祭りのある夏シーズンはかなり盛り上がりますね。

麻生
そうですか。それは強敵が現れたな(笑)。

松尾
しかし、北九州市は地域毎にお祭りがきちんと残っているという事は、確かに凄い事実だと思います。それと「わっしょい百万夏まつり」は、私たち北九州JCの先輩方が立ち上げて、今も脈々と続いているお祭りです。その中で〝まつり大集合〟という旧五市のお祭りに参加してもらうプログラムがあるのですが、それを見ながら、北九州市って本当に色々なお祭りが混在している不思議な地域だなと思うことがあります。

麻生
「わっしょい百万夏まつり」は、日本全体の中でも非常にユニークなお祭りだと思います。伝統的なお祭りと、女性や子どもを含めた市民が参加して作られた新型のお祭りが、渾然一体で行なわれますよね。珍しいタイプのまさに21世紀型のお祭りではないですか。

松尾
お祭りの内容に関しては、賛否あるかもしれませんが、続けることによって新しいスタイルが作られていくと思いますので、北九州JCとしても「わっしょい百万夏まつり」は、これからも継続して行かなければならないと思います。さて話は戻りますが、北九州市というまちを見つめ直した時に、例えば八幡製鐵所を誘致したのも、先見といいますか先駆的に先人たちが動いたからだと思います。都市公民館は昭和20年代の八幡が日本の発祥地だとも聞いておりますし、五市対等合併なんかも当時、世界的にも珍しい事にチャレンジした結果ですよね。これらってバラバラに見えても、実は市民性として何か精神的な軸があって全てが繋がっているのではないかと思います。そして北九州JCとして出した答えが、その精神性というのは「公の精神」だったのではないかと考えました。「公の精神」、つまり自分たち個人の事だけではなく、まちの事、国家の事、未来の事を考えるからこそ、これから起こるであろう課題に対して、先人たちが先見的に取り組んできた。だからこそ、北九州市の今の姿があり、近代国家日本を築くにあたり大きな力を発揮してきたとの見解です。いま私が話した点について知事はいかが考えますか?

麻生
日本の産業革命、近代化というものの一つの大きな原点、出発点というのは何と言っても北九州市なわけです。官営八幡製鐵所には、確かにドイツの技術が入りましたけれどもうまくいかなかった。結局、溶鉱炉を作る段階から、技術的に非常に苦労しながらも自ら作っていったという歴史を有しています。その精神というのは日本全体の命運がかかるという緊張感と、目標を持ってやっていたからだと思います。やはりその伝統がずっと引き継がれていると言う事だと思いますよ。北九州市というのは、今の環境問題を含め、日本に影響を与え、また日本の進路を先取りして示していくという事でやってきましたからね。

松尾
そのような流れから考えると、過去に困難な公害を克服できたのも、軸は同じなのかなと思います。

麻生
七色の煙ってよく言われるでしょ。私が、小学生・中学生時代は本当に七色の煙だったのですよ。

松尾
私たちは写真でしか見た事がありません。

麻生
私たちが子どもの頃は、帆柱山を今のようにケーブルカーではなく、足で登っていましたが、上から見ると本当に七色の煙がもくもくと立っていました。しかし、誰もがそれをものすごく喜んでいましたね。『これぞ、日本の産業復興の象徴だ』と言って。ところが気付いてみたら、それが原因で喘息になったりといったいわゆる公害を引き起こしたのですが、これでは駄目だと。そこからの努力が凄いわけです。それはまさに日本の産業近代化の最先端を走り、同時にそれが生んだ最も難しい問題や課題も、一番先に経験したというわけです。そういう点からいえば、今後我々の経済という視点から、アジアとの関係がますます大事になると思います。これは、一方ではアジアと競争しなければならない。競争しなければ、産業の流出が遅れますし、むしろ我々の失業が増えていく、あるいは所得が下がっていく。しかし同時に活力を取り入れて、どうやって共栄を計っていくかという事もあります。その一見、相矛盾する命題を日本は解決していかなくてはなりません。それは、まさに北九州市は地理的にも、歴史的にもアジアに正対する窓口でありますから、やはり北九州市が一番、真正面から受け止めていかなくてはいけません。というのは、まずは製造業という部分でぶつかっているからだと思います。

松尾
今のお話を聞きながら、改めて自分が北九州市民である事を誇りに思いました。知事もご存知のとおり、北九州JCは(社)日本青年会議所の全国会員大会誘致運動を行って参りましたけれども、『なぜ北九州市で全国会員大会をやらなければならないのか』という誘致理念は、先ほど申した「公の精神」がベースとなっています。先人たちが持っていたその精神性を市民が取り戻し、大会開催を起爆剤にしてそれを国全体に伝えていき、日本という国家を建て直していこうという内容です。今、知事の話をお聞きすると、うまく合致して、この瞬間からまるで社会性を帯びて私たちの誘致理念がようやく一人歩きを始めたような気がいたしました。そしておかげさまで、去る10月15日、我々北九州JCが2012年度第61回全国会員大会の主管を獲得する事ができました。ご協力いただきまして有難うございました。

麻生
あらためて、主管決定、本当におめでとうございます。

松尾
有難うございます。ここからは、知事から全国会員大会に向けて、色々お話をお聞きしたいと思います。全国会員大会北九州大会での理念の発信、コンベンション効果も含めて期待するものがございましたら、ぜひお聞かせ下さい。

麻生
全国のJCの若者が北九州市に集まり、「公の精神」という今の社会にとって非常に重要なテーマを扱って全国会員大会を開くと言う事は、まさに今の時代にとって非常に大切な事だと思います。それと同時に、北九州市に来た時に、全国の青年諸君が北九州市で何が起こっているのか、何を目指して活動をしているのか、どういう成果をあげているのかという事を、是非知って頂きたいですね。五市合併を含めた北九州市の歴史は、やはり近代日本産業の形成史であり、また、近代的な日本を作りあげていく課程における苦闘の歴史です。これを是非知ってもらいたいと思います。21世紀の環境問題を中心に新しい産業を作っていこうというあの「学術研究都市」もそうです。一つの都市であれだけの学研都市をつくったところは無いのですからね。凄い事です。そういった事をぜひ学んで、多いに刺激を受け、また感動を受けて持ち帰って頂きたいと思います。

松尾
北九州市でしか出来ないものもあると思いますし、北九州市でしか見ることのできないものも沢山あるでしょうから、そのあたりは、私たちも自信を持って見てもらいたいと思っております。

麻生
もう一つ自信を持って見てもらいたいものがあるのですよ。それは文化です。松本清張さんが今年生誕100周年ですよね。

松尾
はい。私どもも行政や市民の皆様とともに取り組んでおります。

麻生
北九州市は、何となく煙が出ていて、工業都市だというイメージがあるのですが、一方で松本零士さんをはじめ、非常に優れた芸術家や作家が出ているのですね。しかも、松本零士さんの「銀河鉄道999」もそうですし、松本清張さんに流れるものもそうですが、北九州市で育ち、北九州市で基盤を作り、東京に行くのですね。松本零士さんの「銀河鉄道999」は小倉駅から汽車に乗って、あの頃東京へは夜行列車しかなかったというイメージからきているのですね。二人とも東京に行き大芸術家、大作家になりましたが、やはり北九州市に対する思いが非常に強いですよね。ですから北九州市は独特の芸術文化、作家を育てているというところも多いに皆様に見てもらいたいと思います。清張記念館に行くと、人間の一生でこんな事できるのかというくらい、物凄い作品群ですよ。しかも一つ一つが、よくこんな細かいところまで調べたなというくらいできてますよね。人間というのは一生で出来る事は限りあるけれども、限りがないと思えるくらいできていますよ。ですから、そういった文化を育てるという力もあるのだという事も、是非皆様に知ってもらいたいと思っています。

松尾
先ほど申したとおり、我々北九州JCも今年松本清張の生誕100周年を取り組んでいることもあり、私も理事長として改めて本を読んだのですけれども、すごく昔に書かれているにも関わらず、今の時代に読んでも非常に新鮮で驚きます。先日、猪瀬直樹さんが北九州市に来られたときも、同じ作家としてあれだけ長い時間を掛けて全くテーマの違う事を書き続けるというのは、人間を超えているとおっしゃっておりました。改めて、偉大な方だなと感じました。また、松本零士さんに関しましても、7月にご自宅に伺った際、小倉駅から24時間かけて東京駅に行くときの、そのイメージが「銀河鉄道999」につながったというお話をされました。小倉に在住していたときのエピソードを懐かしそうに2時間ほどしていたのが大変印象的でした。

麻生
そうでしょう。松本零士さんは非常に故郷を愛してらっしゃる。

松尾
松本先生も小倉の話ばかりされるので、『私は八幡出身です』と、私も負けじと故郷が大好きなのをしっかりアピールしてきました(笑)。ただ、そうやって東京にいながらもずっと北九州市を思って頂けるというのは、非常に嬉しい事ですし、ほんとに多くの方々が北九州市から羽ばたいて、全国的、いや世界的に文化面でも活躍されているという事は、私自身も大変誇りに感じています。全国会員大会を通じて是非発信していきたいと思います。

麻生
是非ともお願いします。楽しみにしておきますよ。

松尾
有難うございます。最後に、やはりまちをそして地域を元気にしていくというのは、我々20代から30代の世代が中心になってやっていかなければ、20年後・30年後の地域は作っていけません。またJCは県単位、九州単位、全国単位での組織でもありますので、そのスケールメリットを活かしながら、まちづくりを行える強みを持っています。なので、壁にぶつかりながらも、我々自身が率先して挑戦してやっていかなくては明るい未来の社会はないとも思っております。是非、知事から我々青年世代、そしてJCに対してエールを頂けないでしょうか。

麻生
JCは何と言っても、若手経営者の集まりです。若手経営者の集まりであるという事、つまり若者という要素が非常に大事なのです。若者であるという事は、新しい事を取り入れたるといった、柔軟性を持っている。思考及び行動において、今まで通りではない、ジャンプする、飛躍する、という事を是非やるべきです。次に大切なことは、様々な業種・分野からの集まりだという事です。日本の組織というのは、基本的に同業者組織なのですよね。同業者が集まって、同じような視点でものを見るということは直さないといけません。今必要なのは、一つの物事が起こった際にその起因することを理解しなければならない。それは、同業者よりも異業種のほうが大事です。違った目から見た場合どうなるかという事をやれるのがJCの場だと思います。これは一種の異業種交流です。異業種交流で、何が必要かというと、世界で起こっている事について、それぞれ違った観点から物事を見る事です。この良さをぜひ活かしてもらいたいと思います。それからJCの皆さんは自分たちの後輩を育てなければならないと思います。自分たちの後を継いで、物の考え方、あるいは伝統や文化を引き継ぐことのできる青少年の教育・育成・指導。もっと端的に言えば、物の考え方や、何を大切なものとすべきかという判断の仕方。そういったことをきちんと教えていくという事です。以上の事を是非頑張って頂きたいと思います。

松尾
有難うございます。誰がやらなければならないかとなると、我々JCがやらなければなりません。実際に子を持つ世代ですし、自分たちが子や後輩に対してその背中を見せていかなければなりませんので、今の言葉をしっかりと受け止めてやっていきたいと思っております。これからも、JCそして私たち青年世代をどんどん応援して頂きたいと思います。本日は大変お忙しい中、有難うございました。

麻生
こちらこそ、有意義な時間を有難うございました。そして2012年度は素晴らしい全国会員大会の開催を大変期待しています。

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