対談③ 猪瀬 直樹 氏

日本青年会議所 JC jc jc ライトダウン わっしょい

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ズバリ、北九州に対するイメージは?



松尾
いつも北九州に来られる皆様には必ず質問させて頂いているのですが、北九州に対してズバリどのようなイメージを持たれてらっしゃいますか?

猪瀬
北九州といえばやはり昔からの八幡製鐵所があり、自動車工場も多い。特に小倉から行橋にかけて自動車に関連する工場多いですよね。今回のこの経済不況が無ければ、この北九州は割りと景気が良かったのではないかと思います。

松尾
確かに昨年の日本銀行の企業短期経済観測調査発表などでも、北九州は他地区とも比べて結構ポイントが良かったようです。

猪瀬
一時は中国に工場を進出させる機会が多かったのですが、国内回帰して国内に工場を作っていった代表がこの北九州だと思っております。三重県亀山市といえばシャープ工場のように、北九州といえば自動車関連という感覚で見ていました。もちろん小倉は昔からの都市なので知っています。そういえば「無法松の一生」は小倉でしたよね。岩下俊作さんの作品で、どちらかと言えば小説より映画で有名になりましたが。

松尾
ちょうど、我々北九州JCの事務局が入居している、北九州市立商工貿易会館というビルの裏側に「無法松の碑」があります。小説で彼が住んでいたと設定されていた地らしく昭和34年に建てられたそうです。

猪瀬
「無法松の碑」があるということは、「無法松」は実在の人物なの?

松尾
実際にモデルとなった方がいると聞いております。

清張との関わり、思い出は?


松尾
ところで、今年は松本清張生誕100年ということで、我々北九州JCも市民の皆様や行政とともにそれを盛り上げる事業を展開しております。猪瀬さんは松本清張さんとはどのような関わりがあり、また思い出があるのかをお聞きいたします。

猪瀬
僕はどちらかといえば間接的に影響を受けています。松本清張さんという作家は、亡くなる82歳まで週刊文春と週刊新潮の両方に連載していました。これは凄い事ですよ。僕も以前2つの週刊誌に連載していましたから、その凄さが分かるのです。僕は週刊文春に2ページのコラム、週刊ポストに5ページの小説を連載。一方の清張さんは週刊文春と週刊新潮それぞれに5ページの小説を連載。当時僕は40代後半で体が一番丈夫な時、それでも2本あると締切りが大変だったのですが、それを82歳の人が2本とも5ページやっているというのは本当に驚異でした。「なんでこんなことができるのだろうか?」って。人間技じゃないなと思いましたよ(笑)。

松尾
同じ作家という立場からすると、やはり超越したレベルということですか?
猪瀬 働き盛りだったら理解できますが、82歳でそんなことができる、またそんなことをやっている人はいないですよね。「点と線」がヒットしたのが48歳か49歳ですから、彼にはそれまでの人生でのストックがある。つまりストック分だけやれるわけです。作家がいつまでもピークを作っていくというのは本当に難しいことですから。
歌手の世界のように、いつまでも第一線で活躍していくのは難しいのですね。やはりそういった目に見えない人生の深みがないと、作家としてより良い作品ができないということでしょうか?

猪瀬
通常50歳位を過ぎるとネタが無くなるんですよ(笑)。芥川賞を30歳位でとってしまうとすぐにネタが無くなってしまう。本当は泉のように湧いてこないといけないのだけどね。

松尾
年齢的にもある程度ピークがあるという点も含め、スポーツ選手にも近いものがありますね。

官僚体制は「点と線」の時代と何も変わっていない!


松尾
ところで、猪瀬さんは地方分権改革推進委員会にも所属しておられますが、昨年出版された本の中でも松本清張さんのことに触れられていますね。

猪瀬
松本清張さんが小倉の朝日新聞西部本社での在職中、芥川賞をとってもなかなか売れず、東京の上司に上京したいという内容の手紙を書いたのですよ。僕が2年前に松本清張記念館を訪れた際、その手紙を見せて頂いて、週刊文春に連載していたコラムの中でとりあげたのがきっかけで、僕の本の中にも掲載しました。清張さんが書いた「点と線」の時代は東京→小倉で移動するのに約17時間もかかった。今では交通の便が良くなり、しかもIT化も進む世の中ですが、官僚体制はそのころと何も変わっていない。作家として敬意を表する松本清張さんの話と現在の中央官僚の在り方をうまく絡めたかったのですよ。

JCメンバーはヴィジョンを持って活動を!


松尾
話は変わりますが、猪瀬さんがメルマガ編集長として発行している、HPでのコメントを拝見しましたが、日本が国づくりをすすめるにあたり、お金が無い中、その富を国民から集めて八幡製鐵所を作り、日本の近代化を進めていったという文章の冒頭部分が好きで、地元としても非常に嬉しく感じました。そこから日本という国家の歴史が変わり、昭和初期の時代があって、そこで混迷しながらも戦争で負けて1回リセットされ、戦後にもう1回この国を立て直した。しかしまた今の世の中は混迷している。この先一体どうなっているのか?という内容の短文ではありましたけれども、今の時代を非常に的確に表現しているなと感銘を受けました。

猪瀬
日本の近代化について述べたのですが、ヴィジョンを見失った日本が果たしてこれからどこへ向かうのか。JCメンバーの皆様は、ゆるぎないヴィジョンを持って活動して頂きたいと思います。ただ、もっと地方分権にも関心を持って頂かないと困りますよ(笑)。松本清張さんが育ったこのまちをもっと良いものへと発展させてください。今後の活躍を期待しております。頑張ってください。

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