2010年度 活動指針

理事長所信

原点への回帰 〜We Believe〜



自らの進むべき道の選択を迫られた時。
自らが進んでいる道に迷いを感じた時。
そして、自らの進むべき道に確固たる自信を持った時。
幼いころから何度も読み返した本があります。
その物語からなぜ、勇気をもらうことができたのか・・・
後年、その続編に表現された言葉に、その答えはありました。

「時間は、夢を裏切らない。夢もまた時間を裏切ってはならない。」
(北九州市出身 松本零士氏作 銀河鉄道999より)

はじめに

 1953年7月3日社団法人北九州青年会議所(以下、北九州JC)の前身である小倉青年会議所が社団法人大阪青年会議所(以下、大阪JC)のスポンサーにより発足しました。創設メンバーの先輩たちは、戦後の復興期という混沌とした時代の中にも、明るい豊かな北九州の実現という輝かしい未来を夢に、「北九州にJCを!修練・奉仕・友情」というスローガンを掲げ、運動を始めました。このスローガンを掲げた背景は、社団法人日本青年会議所(以下、日本JC)第五代会頭森下泰(たい)先輩(大阪JC出身)の言葉に見て取ることが出来ます。それは、「JCの目的は、知識ある青年たちの社会奉仕にありそれは、対社会的義務でさえある。」というものです。また先輩は、JCの三信条について「奉仕を実践する過程で、修練と友情が達成される」という立場を打ち出しました。この「修練」「奉仕」「友情」というJCの三信条こそが北九州JCの創始の精神であり運動の原点なのです。

 北九州JCを取り巻く社会情勢は、創立以来、公害問題、オイルショック、鉄冷え、バブル経済の成長と崩壊、と様々に変化してきました。その変化によって顕在化する様々な課題に直面したとき、北九州JCは創始の精神に立ち返りながら運動を展開してまいりました。この創始の精神こそが、JAYCEEがJAYCEEであるために諸先輩方から脈々と受け継がれてきたものであり、社会の情勢がどのように変化しようとも、決して変えてはならない私たちの志なのです。

 さて現在に目をやれば、社会環境、経済環境、自然環境が劇的に変化し、私たちを取り巻く環境は混沌のさなかにあります。私は、この混沌の今を悲観することなく、前向きに捉えることが重要だと考えています。未来を担う子どもたちが自分自身やわがまちの未来に対して夢を抱き、瞳を輝かせて前を向いて歩いていく、そのような社会にしていくためにも、彼らの親である私たち責任世代には、自らの志と行動で転換をチャンスにし、混沌を確かな可能性にかえていく責務があるのです。現在、地域の課題解決に住民自らが参画し、未来を切り拓いていく市民主体のまちづくりが求められている時代になってきました。これは、市民のリーダーとしてわがまちのまちづくりに自ら率先して取り組んできた私たちJCの特性を発揮する好機です。

 北九州JCは、明るい豊かな社会を築くことを目標に志を同じくする青年経済人が集まった団体です。わがまちのために自ら汗を流すと同時に、青年経済人としての責務も果たしていかなければなりません。社会の構成員としての公共性と青年経済人としての自立性を併せ持つ私たちだからこそできる活動があります。それは、北九州の目指す未来ビジョンを提示し、市民を巻き込みながら、市民と共に、北九州の未来を育んでいくことです。このことを再認識し、自らの足元をしっかりと固め、創始の精神を胸にJC運動を展開していきましょう。それこそが、JCの使命であり、存在価値なのです。

 2010年度北九州JCは、以下の4項目を基本方針として、北九州JCの存在価値を自らが再認識し、市民に発信しながら、未来の北九州を創造するための運動を展開します。

 

公の精神を育もう 「奉仕」

 北九州JCの創始の精神であるJCの三信条。その中でも最も私たちの基本となるものは「奉仕」であり、私は、「JC運動とは、まず奉仕から始まる」と考えています。では私たちは何に対して奉仕を行うのか。それは、将来をも含めたわがまち北九州に対してであり、市民に対してです。私たちの運動の出発点は、「わがまち北九州のため」であり、北九州JCのためでも、会員のためでもありません。JC運動とは、JAYCEEが自ら汗を流して社会のため、人のためになされる奉仕活動であることを私たちはもっと認識すべきです。

 私たちは、3年間という日本JC主催の全国会員大会誘致運動において、わがまち北九州の歴史を改めて振り返りました。その中で自分の利益を超えて、常に相手の立場を理解しながら、社会全体のために行動してきたこのまちの先人たちの生き様を感じ、心から誇りに思いました。1901年に官営八幡製鐵所に火が灯り、国家百年の大計に挑んできた先人たち。世界に類を見ない五市対等合併の実現。市民運動からスタートし、立場を超えて共に克服した公害問題。その中で培ってきた環境技術による国際協力。北九州が歩んできた歴史は、他の人のことを自分のことのように大切に思う先人たちの「利他の精神」によって築かれたのです。その精神性こそ「公の精神」です。北九州JCの創始の精神の一つである「奉仕」は、まさにこのまちの遺伝子である「公の精神」そのものなのです。そして、これは現在の北九州で失われかけている大切な精神であり、最も重要なことなのです。

 私たちがリーダーシップを発揮し、市民意識変革運動を巻き起こして、この地域に「公の精神」を取り戻し、育てていきましょう。そのために、私たち会員一人ひとりが「公の精神」をしっかりと身につけ、行動しなければなりません。それこそが、明るい豊かな北九州の実現、そして、全国会員大会を通して、このまちの「公の精神」を全国各地に伝播することに繋がるのです。

 2010年度、北九州JCは改めて会員全員が原点に戻り、北九州JCの創始の志を受け継ぎ、自らの糧とするための学びの場を設け、「公の精神」を実践する同志を増やす運動を展開します。

自分の役割を自覚し何事にも挑戦しよう 「修練」

 JCとは、青年経済人が良識ある市民として自己修練を積むことの出来る場でもあります。北九州JCは、現在異業種の青年経済人260名あまりから構成されています。これは多彩な考え方に容易に接することが出来る恵まれた環境であるといえます。JCは、様々な考え方に触れることで自分には無いものを学び、大きく成長できる絶好の修練の場です。この環境を最大限に生かすには、己を律し、各々が自分の役割を自覚し、地域の課題解決に向けて挑戦することが重要であると考えます。

 例会を始めとして、委員会事業、各種大会、出向等、私たちの前には、修練の機会が無限に広がっています。特に出向は、LOMの中だけではなく地域を越えた人材の中で自分を磨くことができ、それぞれのフィールドの広い視点で物事を捉えることができる絶好の機会であります。私自身も出向によって様々な地域に友人ができ、その友人たちと切磋琢磨する中で、福岡県の中の北九州、九州の中の北九州、日本の中の北九州、と相対的にわがまちのことを捉えることが自然に出来るようになりました。北九州における私たちJAYCEEの役割やJCの三信条を自覚できるようになり、JC運動に対する喜びがより大きくなりました。私は、入会当初先輩から「JCでは毎年違う役目が与えられ、その役を全うしていく中で自分の修練を積むところである」と教えられ、まさにそのことを実感してきました。恐れることなく挑戦してみましょう。何かを学ぼうとする気持ちを大切にして、新たな可能性を信じJC運動に取り組んでいけば、大きな自己の修練になることは間違いありません。

 JC運動の出発点である「奉仕」にそれぞれの役割をもって真摯に遂行する中で様々な困難に直面することがあります。しかし、その時に諦めるのではなく、その困難を乗り越えるために果敢に挑戦したとき、その先には自己の新たなる成長が必ずあります。そうして成長したJAYCEEがまた力強く運動を発展させていくのです。たとえ無謀と思われることでも、このまちの未来のために必要だと思うことにはひるまず挑む若さこそ、私たちJAYCEEの大きな強みなのですから。小さくおさまることなく、未来の夢を見据えつつダイナミックに発想し、私たちの運動を進めていきましょう。その積み重ねがおのずと私たちの修練となり、ひいてはこのまちのためになる、私はそう信じています。

友情の輪を広げ世界平和を実現しよう 「友情」

 北九州JCは、1970年に中華民国の台北市國際青年商會(以下、台北JC)、1975年にはスリランカ民主社会主義共和国のウェラワッタJC、1988年には大韓民国の仁川(インチョン)富平(プッピョン)JCとそれぞれ姉妹JCの締結をおこなうなど、長い国際交流の歴史があります。

 昨年、北九州JCの姉妹JCである台北JCとの協働事業、IFP(International Family Project)児童交換事業の第40回記念式典が行われました。このIFP児童交換事業は、現在北九州JCが行っている継続事業の中で最も長い歴史を誇る事業でもあります。一昨年には、仁川(インチョン)富平(プッピョン)JCと姉妹JC締結20周年記念式典が行われました。式典・懇親会には、それぞれの国から多くの諸先輩方も出席され、お互いを懐かしみ談笑されている姿に私は、諸先輩方から継承されてきた国境を越えた友情のすばらしさに感動を覚えました。そして、幼いころに父親に参加させてもらった、IFP児童交換事業の記憶が蘇りました。私は、この事業のおかげで初めて異文化である外国というものに触れ、日本という国を強く意識したのと同時に、言葉が通じなくとも友情を築くことが出来るということを実感しました。これらのことを積み重ねてきた北九州JCの国際交流事業は、私たちが引き継いでいかなければならない財産であると改めて感じさせるすばらしい機会となりました。

 友情の第一歩は、お互いを知ることから始まります。国を超えてお互いがお互いの歴史、伝統、文化、国家の現状を理解し、尊重し、讃え、認め合うことで友情が育まれていくのです。そしてそこからさらに歩を進め、お互いが畏友となれる友情を構築していきましょう。畏友とは、お互いのことを理解したうえではっきり苦言さえも呈してくれるような尊敬できる友人のことです。私も畏友と時には、相手に対して耳の痛いことでも指摘しあいながら、それを受け入れることでお互いを成長させてきました。このような友情を構築したとき、お互いがかけがえのない存在になっているはずです。

 国際情勢が混沌としている時代だからこそ、「JCの友情は国家の主権に優先する」という理念の下、国家同士が結びつく国際化から国境を意識しない民間での国際化を推し進め、地球社会に貢献するために、民間外交の担い手でもある私たちJAYCEEが、このまちから畏友という友情の輪を世界に広げることで、世界恒久平和の実現を目指します。

未来の北九州を創造しよう 「夢をかたちに」

 北九州JCは、昨年の第58回全国会員大会沖縄那覇大会において2012年開催の第61回全国会員大会の主管LOMに決定いたしました。私はこの北九州で開催される全国会員大会を私たちの提示する北九州のビジョンの実現に向けて市民意識変革運動を大きく飛躍させる最大の機会と位置づけています。私たちはこの大きなチャンスを九州地区協議会や福岡ブロック協議会と連携することでJCのスケールメリットを最大限に活かし、市民意識変革運動を大きく飛躍させて、わがまち北九州の未来を創造していかねばならないのです。そこで重要になるのは、私たちがこの大会を通じて何をどう発信するのかということです。それはすなわち、今後の北九州のビジョンを提示することであり、そのビジョンが未来の北九州を創造するのです。

 私が提示したい未来の北九州の創造に向けたビジョンは、「公の精神あふれる社会」です。これは言いかえればこのまちが目指している「世界の環境首都」を実現することでもあります。相手の立場に自分自身を置き換え、お互いを理解し受け入れ、信頼する心を持ち、持続可能な社会の実現に向けて自らの意思を持って積極的に行動し、わがまちに自信と誇りを持った市民、すなわち「公の精神あふれる市民」こそが、このまちに必要であると考えます。「公の精神あふれる市民」なくして、このまちを「世界の環境首都」に育てることはできません。2012年に向けて、「公の精神あふれる市民」であふれるまち北九州をつくることが、このまちを「世界の環境首都」へ導くと確信しています。北九州JCでは、このビジョン=夢をかたちにし、実現させるために、地域の関係諸団体や行政、さらには市民とこれまで以上に深い関係を構築し、すべてを巻き込んで、現在の北九州市民を「公の精神あふれる市民」に進化させる市民意識変革運動を起こすべく、全力を傾注していこうではありませんか。そして将来において「世界の環境首都」となった北九州がリーダーシップを発揮し、北九州JCの最終目標である、明るい豊かな社会を実現させるという夢をかたちにしていきましょう。

 夢をかたちにする。そのために2010年度の北九州JCでは、夢の創造・夢の実践・夢の連携・夢の発信をキーワードにした事業を進めていきます。これまでの継続事業を含め、私たちが展開するすべての事業を、2012年の全国会員大会に向けて前進させていきます。これまでの良い点を生かしながらも、現状にとらわれるだけに終わることなく、夢をかたちにするために今、挑戦すべきことは何か、という視点で見直し、力強く進化させていきます。混沌を可能性にかえる気概を持って2010年度の事業を展開していきます。

おわりに

 北九州JCの夢は、明るい豊かな北九州の実現です。そしてその夢を実現するためにどのような過程を経ようとも歩み続けていく北九州JCでなければなりません。しかし、私たち北九州のJAYCEEが己の原点を学ばず、創始の精神を受け継ぐことを怠れば、北九州JCは、時代の変化の中でJCではなくなり、その存在意義すらも失ってしまいます。将来において「創始の精神は変わらず、北九州JCの運動は変わっていく」を貫いていくべきであると考えます。「奉仕」「修練」「友情」のJCの三信条を自身に貫きながら明るい豊かな北九州の実現に向けて共に運動を邁進していきましょう。

We Believe

夢を持ちその夢に向かって歩み続けるなら夢は必ず実現するのです!

私たち自身が原点に立ち返り、わがまち北九州のために奉仕し歩むことが、
このまちの夢を実現することにつながる、私はそう信じています。

基本方針

1. 公の精神を育もう
2. 自分の役割を自覚し何事にも挑戦しよう
3. 友情の輪を広げ世界平和を実現しよう
4. 未来の北九州を創造しよう