理事長所信

2015vi

はじめに

私には、常に私を導いてくれる組織と人があった。

高校時代、落ちこぼれそうになっていた私に、やる気のきっかけを与えてくれたのは、スパルタ式に教育する学校方針と担任の先生でした。体育会の少林寺拳法部で、自信のない私を肉体的に鍛え上げ、精神修養としての金剛禅を身につけさせてくれたのは、伝統を重んじる部活と厳しい先輩でした。初めて勤めた会社には、ビジネスを知らない私に組織人の考え方や仕事の進め方を教えてくれる経営理念があり、社長がいました。地元に戻ってきたときには、現状に満足せずチャレンジしつづける姿勢と大人の立ち居振る舞いを見せてくれる先輩経営者がいました。そして、甘ったれて生意気な私を支えてくれる会社と、人生を教えてくれる父がいました。
最良の環境に身を置くことで、良い人に出会うことができ、良い人に出会うことで、自己の成長が得られてきたのだと感じています。

1953年、「奉仕・修練・友情」という創始の精神をもって創設された北九州青年会議所(以下、北九州JC)という組織は、我がまち北九州に様々な影響を及ぼし、市民と一緒に北九州を創ってきました。どんなに優秀な人材がいたとしても、たった独りでは成果を為し得ません。北九州青年会議所という組織があったからこそ、組織として力を最大限に活かしたからこそ、我がまち北九州に無くてはならない存在になれたのではないでしょうか。
そして組織には、リーダーと支える力が必要です。リーダーによるリーダーシップとメンバーによるフォロワーシップがあってこそ、組織の力は最大限に発揮されるのです。北九州JCという組織が育てあげた「ひと」は、リーダーシップとフォロワーシップを兼ね備えています。北九州JCは創始以来、そんな「ひと」を「まち」に送り出してきました。

「まち」は、「ひと」でしか創ることができません。たとえ莫大な資金と組織があろうとも、それを活かす「ひと」が、「良いひと」でなければ、「良いまち」は創ることはできません。「ひと、ひと、ひと、すべてはひとの質にある(少林寺拳法 創始者 宗道臣)」のです。
だからこそ、私たち北九州JCという組織は、明るい豊かな北九州の創造に向けて、市民を巻き込んだ運動ができる人材の育成を、真に「まち」から求められているのです。
私たちJAYCEEは、まちのリーダーとなることができます。青年経済人である私たちは、JCで培われた英知と勇気と情熱を持って、我がまち北九州を創り上げていかなければなりません。
2015年北九州JCは、そのリーダーたる会員たちが明るい豊かな北九州を創り上げていくために、4つの機会と組織を創造します。

可能性のある地域と活力のある市民を創る

2013年に市制50周年を迎えた北九州市は、大きな転換期を迎えています。戦後、北九州の経済を牽引した八幡製鉄所(現 新日鐵住金)をはじめとする鉄鋼分野は、その役割を縮小し、北九州市の人口も1979年をピークに以後下降線を辿っています。社会環境、経済環境の変化により、まちが栄枯を繰り返すのは必然であり、抗いがたい流れなのかもしれません。しかし、鉄鋼分野におけるものづくりの精神を活かした環境分野が北九州を代表する産業へ成長しました。2008年に環境モデル都市に選定された北九州市は、日本の環境分野においてのリーダー的役割を担っています。もはや環境問題は、専門家だけでなく地球に暮らす市民すべてが取り組まなければならない未来への課題となりました。
また北九州市は、経済だけでなく、文学、芸術、サブカルチャーといった特筆すべき文化を培ってきました。工業都市としての発展を契機に様々な地域から多くの人と文化が集まることで、刺激的なものづくりのまちは「文化のかおるまち」へと成長し、多くの文化人を輩出してきました。まちの息吹、市民の息づかいこそが、我がまちが誇る文化の源ではないでしょうか。そして、ハードとしての北九州漫画ミュージアム、あるあるシティ、松本清張記念館、門司港レトロ、北九州芸術劇場、フィルムコミッションなど、他地区に勝る多くのコンテンツを有しています。

地方都市が、まちの特徴を磨き、都市としての魅力を競い始めている今、私たち北九州JCがやるべきことはなんでしょうか。それは、行政や関係各所に任せるのではなく、市民自らの力によって、すでに持っている北九州の強みをさらにパワーアップさせることではないでしょうか。市民が、我がまち北九州の可能性を信じ、誇りに思える機会を自らの手で創り出す必要があります。

誇るべき環境分野への取り組みは、行政や大企業だけが取り組めば良いものでは無いはずです。市民自らが環境モデル都市に住む者として誇りを持ち、世界の環境首都となるべく行動する市民にならなければなりません。そのために、私たちJAYCEEがまちのリーダーとして率先した行動を取り、市民を感化していく必要があります。
また、文化芸術は与えられるものではなく、市民自らの情熱やセンスで創り出してこそ活きるものです。一人でも多くの市民が直接まちづくりに携わり、市民が創る北九州を実感してもらうために、市民の誰もが参加し易く、楽しみながらまちづくりを実感できる運動が必要です。そんな運動こそが、まちの文化として根付かせ、市民に活気と力を与えることができます。

私たちは長年の経験と人脈によって、市民を巻き込む力をもっています。北九州JCは、まちと人々に積極的に係わり、JCの組織としてのノウハウを活かし、可能性のある地域と活力ある市民を創造する機会を創ります。

確かな見識を持ち、行動できるビジネスパーソンを創る

「新しい日本の再建は我々青年の仕事である」
これは、戦後、日本に青年会議所運動が興った時の創始の精神です。戦後の焼け野原から、世界に冠たる繁栄を日本にもたらしたのは、間違いなく青年経済人たちでした。「ひとを育てるは大なり、事業を成すは中なり、財を残すは小なり、されど財なくんば、事業成し難く、事業なくんば、ひと育ち難し」という言葉があります。経済の発展無くして、日本の平和や教育の充実、文化の成熟、文明の発展はありえませんでした。経済の発展は、目的ではありませんが、明るい豊かな社会を築くためには決して疎かにできないことは明白です。
北九州で活躍する青年経済人である北九州JCメンバーが、ビジネスを疎かにしてはなりません。メンバーのみならず、市内で働く経営者やビジネスパーソンの経済活動を充実させることこそが、北九州の発展に繋がるはずです。北九州には、24時間離発着できる北九州空港や国内有数の企業、北九州学術研究都市の産学官民の連携など力強い経済基盤があります。またJCにも、組織論や運営手法、人脈などビジネスに応用できるものが数多くあります。それらを例会やセミナーなど様々な機会を通じて、メンバーや市民に伝えて、より効果的な経済の発展を促すべきです。新しい情報を取り入れ、先人のノウハウを活かし、合理的な組織論を活かした、先進的ビジネスを行えることが我々青年の特権ではないでしょうか。

北九州JCは、率先して一人でも多くの確かな見識を持ち、行動のできるビジネスパーソンを育成し、北九州のビジネスを成長させる機会を創ります。

民間外交の担い手として国際交流の機会を創る

「Be better」これは、国際青年会議所(以下、JCI)のスローガンです。1915年にアメリカでJCの火が灯り、1944年には「積極的な変革を創り出すのに必要な指導者としての力量、社会的責任、友情を培う機会を若い人々に提供することにより、地球社会の進歩発展に資すること」を使命としてJCIが発足しました。国際的活動無しにJC運動は語れません。
日中国交正常化の際に、日本と台湾の間に緊張感があった時にも、台北市国際青年商會との友情は途切れることなく続き、昨年はIFP事業45回目を迎えることができました。同じく、韓国との領土問題が取りざたされた時も、加熱する報道に惑わされることなく、仁川富平青年会議所との公式訪問が続けられ、昨年は協働事業も行いました。ウェラワッタ青年会議所とは姉妹締結40周年を迎えることができました。北九州JC創立60周年記念式典の際に、来日した姉妹JCのOBと北九州JCのOBが、何十年も途切れずに続く友情を確かめ合う姿に感銘をうけ、これこそが民間外交の賜物なのだと実感しました。
国家間が主張をぶつけ合う時にも、私たち北九州JCのような民間外交が必ず繋がっているから、個人と個人が深く繋がっているからこそ、国家間でギリギリまで踏み込んだ外交が行えるのです。だからこそ、私たち北九州JCと会員は、姉妹JCとそのメンバーに深く長く繋がり続けることが必要であり、これからもずっと、今まで以上にお互いの友情を確かめ合い、相互理解を続けなければならないのです。

今年のJCI世界会議は金沢青年会議所の主管で開催されます。世界各国のJCメンバーと触れ合い、相互理解を深める機会が国内にあるのです。また、2019年ラグビーワールドカップ、2020年オリンピック・パラリンピックに向けて、北九州JCは行政や関係団体と一緒に、大規模国際大会誘致委員会を立ち上げました。さらに北九州国際技術協力協会(KITA)や地域の大学の留学生など海外の人々と出会う機会が北九州には豊富にあります。
アジアのゲートウェイをめざす北九州において、我々北九州JCは、海外に住む人々と積極的に交流すると同時に、北九州在住の海外の人々とのネットワークを大切にするなど
、率先して国際的感覚を磨いていかなければなりません。

北九州JCは、メンバーが市民に率先して国際的感覚を身につけ、民間外交の担い手として国際交流を実践する機会を創造します。

確かなリーダーと未来のリーダーを創る

まちのリーダーとして、JC運動を展開するメンバーは、確かな見識と率先する行動力と信頼される振る舞いが求められます。北九州JCの全ての事業と活動が、会員、つまり「ひと」によって創られていることを考えると、ひとの質向上は全ての事業と活動の質向上に繋がります。そして、JC運動で学んだ知識と行動力を地域や会社や家庭に持ち帰り、地域のリーダー、会社のリーダー、家庭のリーダー、つまり「まちのリーダー」となることで、まちのいたるところにJC運動の精神が根付き、明るい豊かな北九州を創ることができるのです。

JCには、40歳卒業、単年度制、委員会、理事会、先輩後輩など様々な素晴らしいシステムがあります。その全ては会員が組織を学び、良きリーダー、良きフォロワーへと成長させるためのOJT(On-the-Job Training)なのです。そして、JCにはJCIコース及び日本JC公認プログラムという、会員の質向上を図ることのできるOffJT(Off-the-Job Training)も存在しています。
北九州というまちを発展させていくためには、1人のリーダーでは足りません。何百という地域のリーダー、何千という会社のリーダー、何万という家庭のリーダーが必要なのです。そして、リーダーは、同時に優秀なフォロワーになり得ます。家庭のリーダーは会社のフォロワーとなり、会社のリーダーは地域のフォロワーとなり、地域のリーダーは北九州のフォロワーになります。
1人の市民が、ある組織ではリーダーになり、またある組織ではフォロワーにもなる。この連鎖構造こそが、まちを発展させる力となるのです。

そして、未来の北九州を創っていく人材である青少年の育成も不可欠です。昨年10回目を迎えた北九州ドリームサミット(以下、KDS)は、北九州の未来のために何百人もの未来のリーダーを送り出してきました。KDS議員たちが、まちに対する夢を考え、その夢を具体的な形にして、実現のために行動することによって、「行動を起こすことで、夢は実現できるんだ。」という成功体験は、必ずや青少年たちにとって成長の力となるはずです。
未来の北九州を支えることのできるリーダーを育成していくことは、地域のリーダーたる北九州JCの重要な責務であり使命なのです。そして、その責務と使命感を、私たち北九州JCだけでなく、多くの市民に伝播させ、市民が自ら未来を創っていかなければなりません。

北九州JCは、我がまちの中核となる確かなリーダーと未来のリーダーになる人材に成長させる機会を創造します。

連携ネットワークの深化と北九州を創る力の強化

北九州というまちで活動する北九州JCにとって、行政である北九州市とは切っても切り離せない深い連携が必要であり、今までも手を取り合ってまちづくりを実施してきました。また、多くの関係団体と連携することで、より効果的、効率的な事業を展開してきました。そして、何よりも市民の協力と理解無しには、ただ1つの事業も成功させることができませんでした。今年以降も、今までの関係性を深化させ、北九州に、市民に求められる組織でありつづけなければなりません。

そして、我がまち北九州を愛し、考え、行動できる市民を1人でも増やすための会員拡大運動こそ、北九州JCにとって最も重要な運動の1つです。北九州JCのメンバーが1人増えるということは、明るい豊かな北九州を創る市民が1人増えるということです。北九州に住む人が、地元を愛することはごく自然なことです。しかし、まちのために行動を起こせる人は僅かなのではないでしょうか。紹介者に見いだされた市民は、行動することの重要性や北九州JCという組織の素晴らしさに気が付く素養を持っているはずです。紹介者をはじめとするメンバーは、入会しようとする市民にJCの理念や運動をしっかりと伝え、JC運動の先輩として入会まで、そして入会後も導いていかなければなりません。北九州JCの魅力をきちんと伝えることさえできれば、北九州を創る力はもっともっと増えるはずなのです。

北九州JCには、品格ある青年の組織であるために、入会後は全員がアカデミーメンバーとして、北九州JCの歴史とメンバーとしての誇りを実体験をもって学びます。北九州JCの、そしてJCIのメンバーとして、最低限必要な知識と行動を身につけ、未来の北九州JCを担う人材になるべく教育や研修を受けます。わっしょい百万夏まつりや到津の森公園での事業などは、JAYCEEとしての知識と行動を学ぶ絶好の機会です。また、例会や委員会といった日々の運動の中でも、ハツラツとした新人らしい積極的行動を取ることにより、組織や役職の大切さ、社会常識やマナーを学ぶことができます。新人教育機関としてのアカデミーの成否が将来の北九州JCの成否、そして、北九州の成否を分かつといっても過言ではありません。

長いJC運動を続けて行く中で、時に人はその意義を見いだせなくなることもあります。そんな迷いの中で、手を差し伸べてくれるのは、志同じくするJCの仲間です。単年度制のJCにおいても、その年のチームだけでなく、今まで一緒に運動した仲間、出向した時の仲間、自らの紹介者、部活動の仲間、地域を同じくする仲間が沢山います。1つのチームだけでなく、様々なアプローチによる仲間が手を差し伸べてくれるはずです。そして、いつの日か自分が手を差し伸べ、導く存在になる。そんな組織がJCの素晴らしさだと確信しています。

北九州JCは、北九州JCの持つ力を最大限発揮するため連携ネットワークを深化させ、JCの組織を充実させ、更に拡大させることにより北九州を創る力を強化する機会を創造します。

終わりに

私たちは、地域から受入れてもらい、会社から送り出してもらい、家庭に支えてもらいながらJC運動を展開しています。決して自分たちの力だけで、JC運動をしているわけではありません。今の私たちがあるのも、地域に育まれ、会社で学び、友人と分かち合い、家族に癒され、何よりも両親から愛情を貰って、今の自分が形成されてきたからに他なりません。私たちは、今まで、そして、これからも受け続ける恩を行動として還元していく義務があります。

私たちJAYCEEには、

To be the leading global network of young active citizens
若き能動的市民の主導的なグローバル・ネットワークになること

という、明確なVisionがあります。

まさに、地域のリーダーとして、会社のリーダーとして、そして家庭のリーダーとしての青年が集まる組織、まちのリーダーとなる組織を目指しているのです。私たちJAYCEEが英知と勇気と情熱を持ち、率先した行動で、恩に報いなければなりません。

さあ、今こそ、私たちから行動しよう!

率先垂範 ~まちのリーダーがみせる英知と勇気と情熱~

基本方針

1、可能性のある地域と活力のある市民を創る
2、確かな見識を持ち、行動できるビジネスマンを創る
3、民間外交の担い手として国際交流の機会を創る
4、確かなリーダーと未来のリーダーを創る  
5、連携ネットワークの深化と北九州を創る力の強化