2008年度 活動指針

理事長所信

2008年度 LOMテーマ:『愛』〜愛が溢れる社会の実現に向けて〜

2008年度 基本方針
【1】 JCの力を進化させよう
【2】 北九州の未来を創造しよう
【3】 コミュニケーション豊かな社会を創造しよう
【4】 友情から世界平和へ繋げよう

飯野 一義
社団法人 北九州青年会議所 2008年度 第56代理事長 飯野 一義

あなたを支え、あなたを前進させる原動力は何ですか。
今、私たちが改めて意識しなければならないことは何ですか。
真に豊かな社会を実現するために必要なものは何ですか。
私は愛であると思います。

愛とは、相手に何かを期待するのではなく、いたわりや思いやりの心を持ち、真摯に向き合い行動し続けることだと思います。同時に、愛は私たち自身を突き動かす大きな力であると考えます。愛する家族、愛する友、愛するまちのためであれば、どんな困難にも果敢に挑戦でき、自分でも驚くほどの力を発揮できるのです。愛は、様々な行動を起こす原動力であり、このまちを心豊かな社会にするために無くてはならないものなのです。

大学を卒業して間もなく父が他界し、社業を後継しなければならない窮地に立たされた時、不安と焦りで困惑していた私を奮い立たせ、突き動かしてくれたものは、愛する家族・社員を幸せにするためになんとかしなければならないという熱い想いでした。そして私自身を支えてくれる彼らや友人たちの想いとサポートがあったからこそ、今の私があります。私を支え、私の原動力となったのは、まぎれもなく愛でした。

今日の社会では愛が欠乏しているとしか考えられない社会問題が起こっています。
親による子どもの虐待。人を人とも思わないような子ども達の事件。多くの偽装事件。拝金主義。環境を無視した経済活動などは、利己的な考え方が先行した結果ではないでしょうか。親が子どもに注ぐ無償の愛、親の愛情をしっかりと感じながら育つこと、他の人を思いやる気持ちや行動、自然を愛する気持ちがあれば生まれなかった問題も多いのではないでしょうか。これからのまちづくりについて考えたとき、ますます大切になるのは、市民一人ひとりの家族を愛する気持ち、地域の人々を愛する気持ち、まちを愛する気持ち、そして愛を行動へと移していくことであると思います。市民参画のまちづくりが求められるようになって久しく、ワークショップをはじめとする手法や仕組みが数多く生まれてきました。しかし、どんなに仕組みが充実しても、市民である私たち自身にまちを愛する気持ちがなければ、まちは変わりません。私たちのまちづくり活動が独りよがりなものになってはいないか、市民の心に響いているかについて改めて意識し直さなければなりません。私たち自身のまちを愛する気持ちと行動をより真摯に、積極的に示していかなければなりません。

2008年度社団法人北九州青年会議所(以下、北九州JC)は「地域にもっと愛されるJCになる」「まちへの愛をカタチにする」「愛の芽を育む」「国際交流で愛を発揮する」、この4つの運動方針を柱に取り組んでまいります。

JCの力を進化させよう 〜 地域にもっと愛されるJCになる 〜

北九州JCは、1953年小倉青年会議所として発足以来、個人の修練・社会への奉仕・世界との友情を三信条に、「前向きな行動力とお互いを支え合う心の大切さ」という創始の精神のもと、55年間にわたりひとづくり・まちづくり運動を展開してまいりました。その結果今日では、歴史、組織力、300名のマンパワー、公益性の高い事業など多くの力を備えた団体となりました。

今、まちづくりを牽引する私たちに求められていることは、我がまちの明るい豊かな未来へ向け、先人より培われてきた地域を愛する心を受け継ぎながら、JCの力を時流に沿って進化させていくことです。そのために、今まで以上に市民から求められるJC運動を展開し、市民にJCを知っていただく活動を進めます。より公益性の高い団体となるため、公益社団法人格取得を視野に入れた準備を進めていきます。

私のJCでの最大の喜びは、多くの会員や市民、そして世界中の仲間たちとの出会いによって、様々な気づきや学びにより、研鑽し、自己変革できること。その活動自体が愛する家族や地域の未来づくりにつながっていくことです。私は、JCで得られるこの喜びをさらに多くの会員と共有したいと思っています。
多くの会員が三信条を学び、個の力を結集して、地域・市民に求められ、愛される運動を行うことが、我がまちの未来を創造し、北九州JCの力をより大きくします。ぜひ、今まで以上に市民と共にまちづくりを実践していきながら、我がまちの未来を創造しましょう。


北九州の未来を創造しよう 〜 まちへの愛をカタチにする 〜

北九州の未来づくりについて、私は2つの取り組みを考えています。

1つは魅力ある環境都市づくりに向けた取り組みです。 環境破壊は全人類が着目しなければならない重要な問題です。地球温暖化等、深刻化する環境問題。これは、暮らしの便利さの追求に偏り、利己的に開発を進め、森林を破壊し、海や川を汚し、資源の無駄遣いを重ねてきた人間の問題、つまりは地球に暮らす私たち一人ひとりの意識の問題に端を発します。
かつて公害のまちと呼ばれていた北九州市は、他都市よりいち早く環境問題に直面しました。我がまちの未来に危機感を抱いた先人達は、市民、行政、企業という垣根を越え、力を合わせた取り組みにより公害を克服し、世界の環境首都を目指すまでに変貌させてきました。エコタウンをはじめとする環境に配慮したハードやシステムはこのまちの誇れる財産です。
しかし、私は思うのです、「我がまちの市民意識は、果たして誇れるものに育っているのだろうか」と。自然や人に対して愛を持って行動する、そんな市民が世界一集まったまち、それが魅力ある環境都市なのではないでしょうか。私は世界に向け、誇れる市民意識を育てるために、まず、モラルやマナーについて取り組むことが必要であると考えています。
モラルやマナーは、お互いを尊重し、思いやること、すなわち愛を持って人やまち、自然に接することから生まれます。それは環境問題を考える上で、私たち一人ひとりがしっかりと身につけなければならない基本であり重要なことです。「自分が良ければそれで良い」そのような発想ではモラルやマナーは育ちません。親からの躾や教育で「人に迷惑をかけない」「物を大切にする」こと、モラルやマナーの大切さを教わってきたにも関わらず、私たち大人自身がそのような教えを実行できていないのではないでしょうか。 子どもたちに未来へのバトンを繋ぐために学校・地域・行政・企業など多くの市民や団体と連携し、モラルやマナーを大切にする運動を実施して、私たち自身が世界に誇れる市民となり、魅力ある環境都市を目指していきましょう。

未来づくりのもう1つの取り組みとして、私は北九州の新たなイメージづくりを考えています。
我がまち北九州のイメージを市外の人はどう思っているのでしょうか。私は、仕事やJC活動を通じて全国各地へ出かける機会に必ず北九州のまちのイメージを尋ねます。残念ながら環境都市や観光都市という答えは少なく、大半は「煙のまち」「工業都市」「犯罪が多そう」というものです。また、「イメージが湧かない」という答えもあります。私たちが誇り、イメージしている「環境先進都市」「自然が豊か」「文化が溢れる」「食べ物は美味しく、住みやすいまち」という答えは返ってきません。これは、このまちの過去のイメージを払拭できていないこと、新たなイメージを生み出し、上手く発信できていないことが原因と考えられます。 このまちに埋もれている、あるいは活かされていない魅力を掘り起こし、新たなまちのイメージを構築する。そして、私たち市民自身が我がまちに対して自信と誇りを持ち、発信していくことが必要です。そこで、北九州の新たなイメージを育てるきっかけとして、我がまちの人や文化・歴史・観光資源・食材を活かし、行ってきた新九州五街道事業やブランド推進事業など、過去の事業の検証を行い、まちのイメージ、ひいては北九州のブランドとして特化すべき資源の再考察を試みます。同時に、周辺地域との連携や交流を深め、周辺地域と共に相乗効果を生みながらまちのイメージを発信する活動を進めていきます。また、この活動をJC内だけに留めず、まちの新たなイメージを共有し、発信する市民運動へと繋げるべく、多くの市民と共に様々な視点から北九州の魅力を発掘するまちづくり事業を創造します。その事業の一つとして2011年度(社)日本青年会議所全国会員大会主管LOMとして立候補いたします。全国会員大会を開催することは、市民と共に我がまちの魅力の新たなる発掘や再認識へとつながり、まちへの愛情や誇りを育て、市民意識を変革するための大きなチャンスであると考えます。全国会員大会招致活動という手段を通じて我がまちの新たなビジョンを市民と共に創造し、LOM一丸となって全国4万人のJCメンバーに発信していきましょう。

以上の2つの視点で、私たちのまちへの愛を表現し地域のグランドデザインを描いていきたいと強く思っています。


コミュニケーション豊かな社会を創造しよう 〜 愛の芽を育む 〜

現代社会にはコミュニティの崩壊や教育問題など、実に多くの問題があります。そのような様々な問題に少なからず影響を及ぼしていることの1つとして、私は人と人との関係づくり、コミュニケーション能力について着目しています。

コミュニケーションの語源は共有を意味するラテン語コミュニカーレ(communicare)であります。つまり、人が互いに思いや考えを伝え合い、共有することがコミュニケーションです。コミュニケーションなくして、お互いの愛情はもちろんのことまちへの愛は育ちません。コミュニケーション能力は愛の溢れる社会を育てるために欠かすことのできないもの、愛の芽であると思うのです。
世界中の情報を机の上のパソコンで瞬時に得ることができる情報化社会、科学や技術の進歩が加速したスピード社会の中で、人は、より良い対人関係を築くこと、そのために時間を費やすことを軽んじてしまっているのではないでしょうか。大人も子どもも、人との関わり方や関係の築き方に不器用になっているように思いませんか。

私たちが子どもの頃には、家族で山や海へ出かけるときに地域の親や子どもたちにも声をかけ、みんなで一緒に楽しんでいました。子供会活動を通じての楽しい思い出を覚えています。子どもが悪いことをしたら、親はもちろん、近所のおじさんやおばさんが他の家の子どもを叱るという光景も多々ありました。そのような身の回りの人たちとの日常のやりとりは、社会の中で人と接するためのトレーニングの一つにもなっていたように思います。身近なコミュニティにおいて、子どもは意識するしないに関わらず、人は人と、あるいは自然と共生しなければならないことや愛情を体で学び、コミュニケーション能力を身につけていたのではないでしょうか。

幸い、他都市と比べると北九州には、まだコミュニティが残っており、このことは我がまちの魅力の一つと言えます。だからこそ、このまちの魅力を活かし、今、私たちは、人間が持ち合わせている愛という力をもう一度意識し、発揮して、コミュニケーション能力を高めていかなければなりません。私たち大人一人ひとりがコミュニケーションの大切さを自覚し、その能力を身につけ、高めて、感受性豊かな子どもたちを育む家族や地域の愛の輪を創り出すことが必要です。そして、子どもたちと真摯に向き合い、彼らの想いを聞くこと、子どもたちに私たち大人の経験や想いを伝えていくことが重要です。また、JCメンバーが個々のコミュニケーション能力を高め、今まで以上に地域に踏み込んだ情報の受発信を行うことが、我々の運動を市民の心に響く事業へと進化させると信じています。
私たちJCが率先して、お互いを尊重し合い、思いやる愛の行動、それにもとづくコミュニケーション能力の育成に取り組んでまいりましょう。


友情から世界平和へ繋げよう 〜 国際交流で愛を発揮する 〜

昨年開催された台北JC50周年記念式典と懇親会。双方の先輩方が懐かしみ合い、親しく杯を交わす姿に、姉妹JCとしての友情の深さを改めて感じさせられました。また台風の影響で悪天候だったにも関わらず、私たちとの約束を大切に思い、我がまちを訪れてくれた仁川富平JC。彼らの想いに胸が熱くなりました。これこそが先輩方より長年受け継がれ国境を超えた友情の証であり、私たちが未来へ引き継ぐべき「財産」であると改めて感じることができました。

アジアに近く、24時間利用可能な空港やひびきコンテナターミナルなどのインフラが充実した北九州。アジアの玄関口としての存在感をアピールするためにも、より多くのJCメンバーで、アジアの人々との友情を深めていく取り組みを通じて、このまちの魅力を発信していきます。そして、JCIの最終目的である世界平和を目指します。
先輩方から受け継いだ財産を活かし、さらに昇華させるために、国や民族や宗教を超えて一つひとつの出会いに感謝し、思いやりの心で、お互いの国の文化や歴史を尊重し合いながら、心と心が結び合える交流事業を展開します。一つの目的に向かって共に行動し、心から共感や共生することで普遍的な友情を育む交流へ繋げていきます。

友情の「友」という漢字は、お互いをかばい合う手と手を重ね合わせることから出来ているそうです。まさにそれは、愛を行動に移した姿そのものではないでしょうか。まずは、今日の出会いに感謝する心からの握手から始めましょう。

私は幼い頃から剣道を学んできました。剣道では、相手や自己に向けて修練した成果を発揮し、礼を尽くし、充実した気合いで心と技、それに体が一致して一本となります。心技体の三つが揃ってはじめて成長することができます。
この心技体を人やJC活動、まちづくりに置きかえて言えば、「心」は愛する気持ち、「技」は愛をカタチにするための方法や手法、そして「体」は愛を表す行動であると感じます。この三つを兼ね備えてこそ、人はもちろん、まちは育つのではないでしょうか。私たちはこれまでの経験や先輩達から受け継いだ精神をもとに、数々の手法や技を得てきました。そして今、改めて会得していかなければならないのは心と体、すなわち、家族や仲間、市民、まちを真剣に愛し、愛を行動で示していくことです。

愛があるからこそ力強く生きることができる
愛があるからこそ我がまちを変えることができる
そして、愛が溢れる社会こそ、真に豊かな社会である。

私たちは、愛が溢れる社会の実現を目指して、ひとづくり・まちづくり運動を展開してまいります。

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